ここでは、心臓弁膜症の手術を受け、退院してからの生活を、運動、食事、感染の予防、職場への復帰の観点で紹介します。
家に帰ってからの運動の量も主治医の指示に従って下さい。
一般的には家の周りの散歩から始めます。動悸や息切れが起こらなければ300mの散歩を2~3日、500m、700mをそれぞれ2~3日とだんだんと散歩の距離を伸ばしましょう。それとともに速度を少しずつ速くして下さい。
自覚症状(動悸、息切れ、狭心痛、下肢のむくみなど)がなければ少しずつ距離を伸ばし、速度を早くしても大丈夫です。散歩の距離が伸びると自信につながりますが、無理をしてはいけません。自覚症状が起こらない範囲の運動をすることが大切です。
食事はワーファリンを服用していない人は何を食べても構いませんが、弁膜症の患者様の20~30%に冠状動脈硬化の合併がみられるため、次の注意を守りましょう。
動脈硬化を引き起こす原因をリスクファクター(危険因子)といいますが、この因子は①高血圧 ②コレステロールの多い食事 ③タバコの吸い過ぎ ④糖尿病 でこれらを4大危険因子といいます。このほかに⑤ストレス ⑥運動不足 ⑦肥満 ⑧不摂生 などがあげられます。
高血圧
血圧を上げる原因の1つは食塩の摂り過ぎです。いま日本人の平均は1日13グラム(g)の食塩を摂っていますが、厚生労働省では1日10g以下を目標に指導しています。
欧米では1日6g以下を目標にしています。魚の蛋白質と魚の油は血圧を下げるのによい働きをします。
コレステロールの多い食事
コレステロールは細胞膜、胆汁、ある種のホルモンなどを作る大変大切なものですが、たくさん食べ過ぎると動脈硬化を助長します。
卵の黄身、タタミイワシ、イクラ、スジコ、ウニ、ケーキ、アイスクリームなどに多く含まれています。どの食品も食べ過ぎないように注意しましょう。
糖尿病
糖尿病は遺伝が大きな原因ですが食事をたくさん摂り過ぎると発病する場合があります。糖尿病の人は医師、栄養士の指導を受けましょう。
肥満
標準体重は(身長-100)×0.9です。160cmの人は(160-100)×0.9=54kg。
BMI(Body Mass Index)という指標では体重÷(身長m×身長m)が22~24を目標にして下さい。160cmの人は(1.6×1.6)×22=56kgくらい。肥満に注意しましょう。

歯の治療、特に抜歯、膀胱鏡検査、大腸の検査の前に、担当医に人工弁置換手術を受けておりワーファリンを服用していることを話して下さい。そうすると抜歯の2~3日前にワーファリンを中止し、抜歯や検査の2~3日前と後、全部で6日間ぐらい抗生物質が投与されます。
抜歯や検査によって細菌が血液中に入り込み致命的な細菌性心内膜炎を引き起こすことがあります。予防のために抗生物質は必ず服用して下さい。
歯科治療を受ける時の注意
- 歯科の治療を受ける時は、主治医からの紹介状をもらいましょう。
- 抜歯する前後6~7日は抗生物質の投与を受けましょう。
- 歯科医に心臓弁膜症の手術をしたことを伝えましょう。
職場への復帰も主治医の指示に従って下さい。
一般的にはまず自宅から駅まで歩いてみます。これで自覚症状が起こらなければ、次に電車や地下鉄に乗って職場に近い駅まで行きます。大丈夫なら自宅から職場まで2~3日往復してみます。次に職場で半日働いてみます。自信がついたら全日働くというふうに、自分の体の慣らし運転から始めましょう。

初めのうちは体が思うように動かないことがありますが、弁膜症を持っていた時より心臓の状態は良くなっているのですから、あせらず自信を持って働いているうちに以前より楽に働くことができるようになります。 あせらないこと、無理をしないことが大切です。
体調や悩み事など主治医には何でも相談して指示を仰いで下さい。主治医は適切なアドバイスや必要な薬を処方してくれます。