ICD(植込み型除細動器)治療

2. 不整脈について

不整脈について

刺激伝導系を規則正しく伝わる興奮が、調律の異常や伝導路の異常、あるいは興奮が伝導路以外から始まるなどの、脈が不規則に乱れた状態を不整脈といいます。(呼吸や発熱、運動などによる一時的な脈の変化は生理的な反応であり、心配ありません)

不整脈には大きく分けて3つの種類があり、脈が遅くなる「徐脈」、脈がとぶように感じられる「期外収縮」、脈が速くなる「頻脈」です。

頻脈

頻脈とは洞結節からの異常に速い興奮や、正常な伝導路以外に抜け道ができる事により、正常な洞結節からの興奮より早く、異常な伝導路を通り伝わった刺激が、ぐるぐる空回りするなどにより起こります。頻脈には主に、心房からの早い興奮で起こる「心房細動」、「心房粗動」、「発作性上室性頻拍」や、伝導路異常の「WPW症候群」などがあります。これらを上室性不整脈といいます。また、心室から早い興奮が発生する「心室頻拍」、「心室細動」などの心室性の頻脈がICDによる治療の対象となります。

心室性不整脈

心室頻拍

脈拍が突然速くなる。この脈の変化の始まりが心室からの場合は注意が必要です。心房の動きと心室の動きが同調できない事と、脈拍が速くなり心室内に血液が充満する前に心室が収縮するため、心臓がポンプの役割を果たせなくなります。そのため全身に送られる血液の量が減少します。

この状態が長く続くと、脳や身体、心臓自体に酸素が行き渡らなくなり、失神発作やめまいを、さらには意識不明を引き起こし、心停止から突然死になる可能性があります。

心室頻拍は心筋焼灼術(アブレーション治療)で根治される事もありますが、異常興奮の発生が複数である場合や、焼灼困難な場所で治療できない場合また、抗不整脈薬によるコントロールが難しい場合には、ICDによる治療が必要となります。

心室頻拍

心室細動

心室細動は心室の筋肉がバラバラに興奮し、心臓の動きに規則性がなくなるため、心電図上の脈拍数は1分間に300回以上になる事もありますが、実際は心臓が震えているような状態です。そのため心臓から送り出される血液はほとんどなくなり非常に短い時間に意識を失います。さらに治療が遅れると、自然に心室細動が停止する事はまれであるため死に至ります。発作が起こった場合、直ちに電気ショック治療や、心臓マッサージを行わなければなりません。心室細動を止めるには電気ショック治療以外に無くICDによる治療が非常に有効です。

心室細動

検査について

ICDを植込む前に病状の確認や治療方針の決定、さらに、植込みが本当に必要かどうか、また植込み後のICDの治療を適切に行うために様々な検査があります。

下記の他に「薬剤負荷試験」、「血液検査」、胸部の「MRI」や「CT」などの画像診断装置で多角的な検査を行う場合もあります。

主な検査

体表面心電図検査

両手足と胸部に6個の電極をつけて心臓の電気の流れを調べます。手足の電極から心臓を垂直に6方向、胸部の電極から水平に6方向の合計12通りの心電図をみる事により、脈拍のリズムや心臓の電気刺激の伝わり方、異常の種類や個所を調べます。

運動負荷心電図検査

ベルトの上を歩行するトレッドミル検査や自転車こぎのエルゴメーターなどで徐々に身体的に負荷をかけ、運動時に現れる不整脈や心電図の変化を調べます。

運動負荷心電図検査

ホルター心電図検査

通常の心電図検査では捕捉できない異常や症状を見つけ出すために24時間の長時間にわたり心電図の記録をします。日常生活上に出現する不整脈や心電図の異常や症状を調べます。

超音波検査

人が聞き取れる範囲よりも高い音「超音波」を利用して得られた画像による診断を行います。心臓の大きさや形状、心筋の厚さや動き、さらに弁の動きと血流の速さや弁の漏れ具合などを調べて、障害の程度や異常の有無を検査して診断に役立てます。

超音波検査

心臓カテーテル検査

腕や足のつけ根などの静脈や動脈から心臓の内部にカテーテルと呼ばれる細いストロー状の管を挿入して心臓の機能の評価や、造影剤という薬品を用いて心臓全体や血管の形状を確認します。また、電気生理学的検査(EPS)では複数の電極を持ったカテーテルで心臓内部の心電図の記録を行ったり電気刺激で刺激の伝わり方や頻脈の発生機序を確認します。

心臓カテーテル検査は通常カテーテルの挿入部分の局所麻酔で行われます。痛みの無い(少ない)状態で行われますが、意識下で検査が行われますので痛みや不快感などが強い場合は術者あるいは立会いの医師に申し出ていただけます。

不整脈の治療

抗不整脈薬

抗不整脈薬は心臓の筋肉が興奮するまでの時間や興奮の持続時間を調節する事で心拍数を高すぎないように安定させて、頻脈の発生を予防する事が目的で使用されます。しかし、薬効によりいくつかの分類がありますが、いずれも副作用があり、強く出る場合や効果が無い場合があります。

アブレーション治療/カテーテル心筋焼灼術

アブレーション治療は、心筋に接触させたアブレーション用電極カテーテルの先端に高周波を通電して、通電によって発生した熱で異常な伝導路や異常興奮している心筋を壊死させる根治療法です。心室頻拍のアブレーションは異常興奮の発生個所や異常な伝導路が心内膜か心筋内部の場合でも比較的浅い場所であれば根治できる可能性が高くなります。しかし、カテーテルの固定が難しい場合では心室内であるため血流により電極が冷却されて焼灼に必要な熱が加えられない事や目標個所が深く熱が届かない場合や、また複数の異常伝導路や異常興奮個所がある場合などでは治療が難しく根治できない事もあります。

外科的治療

異常興奮している心筋や異常な刺激伝導路を外科的に治療します。開胸による手術のため大きな侵襲がありますが、アブレーションと同じく治療できれば頻脈を根治する事ができます。しかし、複数箇所に異常がある場合はアブレーション同様治療が難しくなります。

ICD治療/植込み型除細動器による治療

頻脈の経験があり、上記の治療が困難な場合は突然死の予防としてICDの植込み術による治療がもっとも有効となります。海外で行われた抗不整脈薬とICD治療での死亡率の比較ではいずれもICD治療により死亡率が改善されたという結果でした。

ICDは不整脈を予防するのではなく、発生した頻脈を停止させる対症療法です。

不整脈治療の流れの例
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