ICD(植込み型除細動器)治療

5. 使用上の注意

 

ICDは心臓が発生する微弱な電気を常時監視していますが、それよりも強いノイズ(電磁波等)があると、ICDの作動に影響を及ぼす可能性があります。そのため、使用上注意しなければならない、電気機器や、近寄らない方が良い場所などがあります。日常生活での注意事項や運動についてなどを記しますのでお読みいただきご理解下さい。

重要

担当医からあなたの脈拍とICDについて知識を得ておき、毎日1分間の脈拍数を数えてください。

担当医の指示に従い、定期検診を必ず受けて下さい。

医療を受ける場合、ICDを植込んでいることを医師に伝えてください。

万一、意識がなくなる病気や外傷、意思を伝達できない状態になったことを考えて、常にICD手帳を携行して下さい。

住所、氏名等に変更があった場合にはその旨を担当医に連絡してください。

ここに示した注意事項は、あなたご自身の危険や損害を未然に防止するためのもので、「危険」「警告」「注意」の3つに分けてお知らせしています。いずれも安全に関する重要な内容ですので、必ずお守り下さい。なお、ここに示した注意事項は将来にわたり限定されるものではありません。

危険

切迫した危険が存在し、危険を回避できなかった場合、死亡または重傷を負う。

警告

危険が潜在的に存在し、危険を回避できなかった場合、死亡または重傷を負う可能性がある。

注意

危険が潜在的に存在し、危険を回避できなかった場合、中程度又は軽度の損害を負う可能性がある。又は物的損害だけが発生する可能性がある。

危険

漏電している電気機器(通常使用しても問題のない電気機器を含む)には絶対に触れないで下さい。
感電によりICDが影響を受ける可能性があります。

警告

身体に通電したり、強い電磁波を発生する機器(肩コリ治療器等の低周波治療器、電気風呂、医療用電気治療器等、高周波治療器、筋力増強用の電気機器(EMS)、体脂肪計等)は使用しないで下さい。
電磁波がICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことがあります。

空港等で使用されている金属探知器(設置型・携帯型)から発生する電磁波が、ICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことがあります。
保安検査を受ける際にはICD手帳を係官に提示して、金属探知器を用いない方法で検査を受けて下さい。

小型無線機(アマチュア無線機(ハンディタイプ・ポータブルタイプ及びモービルタイプ)、パーソナル無線機及びトランシーバ(特定小電力無線局のものを除く)等)は、ICDに影響を与える可能性が高いため、使用しないようにして下さい※1。
※1 医薬品副作用情報No.143参照

医療機器の中にはICDへ影響を及ぼす可能性のある装置があります。
医療機関等で下記の医療機器を使用して診療を受ける際には、あなたがICD患者であることを診療前に必ず医療関係者に伝えて下さい。さらに、ICDに影響を与える可能性のある場所に立ち入ることを避けて下さい。あなたが避けなければならない場所について、医療機関の窓口で情報をもらうことができます。通常、これらの場所には表示があります。

磁気共鳴画像診断装置(MRI)、電気利用の鐵治療、高周波/低周波治療器、ジアテルミー、電気メス、結石破砕装置、放射線照射治療装置、X線診断装置、X線CT装置※2(PET-CT装置※3を含む)
※2 医療品・医療機器等安全性情報No.221参照
※3 PET(ポジトロン)自体は影響ありませんが、CT装置を併用するPET-CT装置はX線CT装置と同様に影響を与える可能性があります。

店舗や図書館等公共施設の出入口等に設置されている電子商品監視機器(EAS)からの電磁波がICDの作動に影響を及ぼす可能性があります。また、電子商品監視機器はわからないように設置されていることがありますので、出入り口では立ち止まらないで中央付近を速やかに通り過ぎるようにして下さい※4。
突然、身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちにその場所から離れて下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。
※4 医薬品等安全性情報No.155及び医薬品・医療用具等安全性情報No.173、190、203参照

物流・在庫管理や商品の精算、盗難防止等の目的で使用されるRFlD(電子タグ)機器からの電磁波がICDの作動に影響を及ぼす可能性がありますので、以下の事項をお守り下さい※5。

ゲート型のRFlD機器:ゲート付近では立ち止まらないで中央付近を速やかに通り過ぎて下さい。また、ゲートタイプRFlD機器の周囲に留まったり、寄りかかったりしないで下さい。

据置き型のRFID機器(高出力950MHz帯パッシブタグシステムに限る):RFID機器が設置さ れている場所の半径1m以内に近づかないようにして下さい。

ハンディ型、据置き型(高出力950MHz帯パッシブタグシステムを除く)及びモジュール型のRFID機器:ICD植込み部位をRFlD機器のアンテナ部より22cm以内に近づけないで下さい。

ICDの植込み部位にRFID機器を近づけた場合にショックを放電する可能性がありますので、より注意が必要です。【試験では、ゲート型で密着状態、ハンディ型で最大1cm、据置き型(高出力950MHz帯パッシブタグシステムを除く)で最大6cm、据置き型(高出力950MHz帯パッシブタグシステムに限る)で最大10cmの距離にICDを近づけた場合にショック放電が観察されました。

突然、身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちにその場所から離れるか或いは植込み部位をRFID機器のアンテナ部から離して下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。
※5 医薬品・医療用具等安全性情報No.203及び医薬品・医療機器等安全性情報No.216、237参照

下記の場所又は機器に近づくことは絶対に避けて下さい。
強い電磁波がICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことが あります。知らずにこれらの機器又は場所に近づき、身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等) を感じた場合、直ちにその場から離れて下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

誘導型溶鉱炉、各種溶接機、発電施設、レーダー基地、強い電磁波を発生する機器等

下記の電気機器を使用する場合にはICDの植込み部位に近づけないで下さい。
機器が発する電磁波がICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことがあります。身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちにその電気機器から離れるか或いは使用を中止して下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

IH調理器※6、IH炊飯器※7、電動工具等

特にIH炊飯器については、炊飯中はもとより保温中においても電磁波が放出されますのでご注意下さい※8
※6、7、8 医薬品・医療用具等安全性情報No.185参照

携帯電話(PHS及びコードレス電話を含む)を使用する場合は、以下の事項をお守り下さい※9。

操作する場合は、ICDの植込み部位から15cm以上離して操作して下さい。

通話をする場合は、ICDの植込み部位と反対側の耳に当て、15cm以上離して通話して下さい。

携行する場合は、ICDの植込み部位から15cm以上離れた場所に携行して下さい。もしくは、電源スイッチを切って下さい。胸ポケットやベルトに携行する場合には、十分距離が取れていない場合もありますので、ご注意下さい。

身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちに使用をやめ、15cm以上植込み部位から遠ざけるようにして下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。なお、他の人が携行する携帯電話や自動車電話のアンテナ等に近づくと影響の出ることもありますので、このことについてもご注意下さい。
※9 医薬品副作用情報No.137、143、155、医薬品・医療用具等安全性情報No.179及び医薬品・医療機器等安全性情報No.216、226、237参照

キーを差し込む操作なしでドアロックの開閉やエンジン始動・停止ができるシステム(いわゆるスマートキーシステム)を搭載している自動車等の場合、このシステムのアンテナ部(発信機)から発信される電波が、ICDの作動に影響を及ぼす可能性がありますので、以下の事項をお守り下さい※10。

このようなシステムを搭載した車両に乗車する場合には、アンテナ部から植込み部位を22cm以上離すようにして下さい。また、ドアの開閉時には、アンテナ部から電波が一時的に発信されますので、必要以上にドアの開閉を行なわないようにして下さい。

運転手等が持つ通信機器(携帯機(キー)を車外に持ち出すなど車両と携帯機(キー)が離れた場合、アンテナ部から定期的に電波が発信される車両がありますので、ICDを植込んだ方が乗車中には、携帯機(キー)を車外に持ち出さないようにして下さい。

駐車中においてもアンテナ部から定期的に電波が発信される車種がありますので、車外においても車両に寄りかかったり、車内をのぞき込むまたは車両に密着するような、植込み部位を車体に近づける動作は避けて下さい。

他の方が所有する自動車に乗車する場合は、当該システムを搭載した車種かどうか確認して下さい。突然、身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちにその車両から離れるか、22cm以上植込み部位から遠ざけるようにして下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちに使用をやめ、22cm以上植込み部位から遠ざけるようにして下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。
※10 試験ではICDにおける除細動機能への影響は観察されていませんが、不必要に接近させないようにして下さい。(医薬品・医療機器等安全性情報No.224参照)

ワイヤレスカードの読み取り機(リーダライタ部)には不必要に接近しないで下さい。各種交通機関の出改札システムやオフィスなどの入退出管理システムで使用されているワイヤレスカードシステム(非接触ICカード)からの電磁波が、ICDの作動に影響を及ぼす可能性がありますので、以下の事項をお守り下さい※11。

ICDを植込まれている方は、日常生活において特別に意識する必要はありませんが、念のため植込み部位をワイヤレスカードの読み取り機(リーダライタ部)に密着させないようにして下さい。

身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちに使用をやめ、植込み部位から遠 ざけるようにして下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。
※11 医薬品・医療用具等安全性情報No.190参照

全自動麻雀卓等、使用中に常に磁気を発生する機器での遊戯は避けて下さい。磁気がICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことがあります。
身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちにその電気機器から離れるか或いは使用を中止して下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

磁石又は磁石を使用したもの(マグネットクリップ、マグネット式キー等)をICDの植込み部位の上に決してあてないで下さい。また、胸ポケットに入れないで下さい。
磁気がICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことがあります。万が一、あててしまった場合は直ちに磁石を取り除いて下さい。ICDの作動は元に戻ります。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

磁気治療器(貼付用磁気治療器、磁気ネックレス、磁気マット、磁気枕等)を使用するときはICDの植込み部位の上に貼るもしくは近づけることは避けて下さい。
磁気がICDの作動に影響を及ぼす可能性があります。身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等) を感じた場合、その使用を中止して下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

エンジンのかかっている車のボンネットを開けてエンジン部分に身体を近づけないで下さい。
電磁波がICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことがあります。身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちに離れるか或いはエンジンを切って下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

下記の機器を操作・運転する場合は露出したエンジンに身体を近づけないで下さい。
電磁波がICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことがあります。身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちに離れるか或いはエンジンを切って下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

農機(草刈り機、耕運機等)、可搬型発電機、オートバイ、スノーモービル、モーターボート等

腹部にICDが植込まれている方は鉄棒運動等、腹部を圧迫する運動を避けて下さい。
腹部にあるリードが折れてしまいICDの刺激が心臓に伝わらなくなり、場合によっては失神等を起こす可能性があります。もし、身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

転倒したり、高い所から落ちたり、木・金属等の硬い物で強く打ったり、ボールがあたるなど、ICDが植込まれている部分に強い衝撃を受けるとICDの内部回路が破損し、ICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことがあります。
強い衝撃を受けた時は主治医の診察を受けて下さい。

ICD植込み部位は叩かないで下さい。
長期に渡り繰り返し叩き続けるとICD本体及び内部回路の破損を招く恐れがあります。

注意

腕を激しく使う運動又は仕事をする方はあらかじめ担当医に相談して下さい。
ぶら下がり健康器の使用及びザイルを使用する登山は避けて下さい。運動の種類及び程度によってはICDのリードを損傷することがあります。ICDの刺激が心臓に伝わらなくなり、場合によっては失神等を起こすことがあります。もし、身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

電気機器を修理する場合は身体の異常(めまい、ふらつき、動悸等)に注意して行って下さい。
その機器がICDの作動に予期しない影響を及ぼす可能性があります。異常を感じたらすぐに電源を切る或いはその機器から離れて下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

電気機器を使用して、身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、ICDの作動に影響を及ぼしている場合があります。
その場合はすぐにその電気機器から離れるか或いは使用を中止して下さい。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

下記の電気機器は使用しても心配ありません。ただし、カチカチと頻繁に電源スイッチを入れたり、切ったりしないで下さい。
スイッチ操作により生ずる電磁波がICDの作動に影響を及ぼし、場合によっては失神等を起こすことがあります。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

電気カーペット、電気敷布、電子レンジ、電気毛布、テレビ、ホットプレート、電気コタツ、電気洗濯機、電気掃除機、レーザーディスク、トースター、ミキサー、ラジオ、ステレオ、 ビデオ、電動タイプライタ、コンピュータ、無線LAN、ワープロ、コピー機、ファックス、 補助器等

ICDの植込まれた側の腕に非常に重い荷物を持つ等、力がかかるような動作及び運動は避けて下さい。
ICDの作動に影響を及ぼし、身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じることがあります。動作及び運動を中止すれば、ICDの作動は元に戻ります。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

以下のような症状が現れたら、身体やICDをチェックする必要があります。
担当医に連絡して診察を受けて下さい。病状の変化、ICDの寿命又はICD作動異常等が生じている可能性があります。

胸がいたむ、息が苦しい

めまいがしたり、ボーッとして気が遠くなる感じ

身体がだるい

手足がむくむ

植込み手術の傷跡がはれる、痛む

しゃっくりが頻繁におこる

脈拍が非常に遅い又は速い

頻脈を自覚した(強く叩かれるあるいは蹴られたようなショックを感じた)場合はICDが正常に作動していても担当医に連絡して指示に従って下さい。

ICD植込み後次の諸点に注意して下さい。
長時間におよぶ日光浴は、ICD本体が加熱し、動作に影響を与える可能性があるため避けて下さい。

自動車の運転に関しては担当医にご相談下さい。
平成14年5月16日に警察庁交通局運転免許課より交付された『運転免許の欠格事由の見直し等に関する運用上の留意事項等について』にて、ICD植込み患者への運転に関する制限事項が制定されています。

シートベルトを装着される時には植込み部位にクッションになるものをあてがう事をお勧めします。
自動車に乗車されてシートベルトを装着した際に、ベルトがICDに当たる場合は強い圧迫でリードの断線などを起こす可能性があります。タオルなどクッションになるものを植込み部位あてがう事をお勧めします。

警告および注意などに記載されていない電気機器の使用に際し不安または危惧される場合には主治医の指示に従って下さい。

 
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