ICD(植込み型除細動器)治療

4. 手術後について

手術後について

手術後は新規に植込まれた方と交換された方では安静度や注意事項が異なりますので主治医等の指示に従って下さい。通常新規で植込まれた方の場合はリード(導線)の固定が不安定であるため腕や身体の動きを制限されます。また、交換の方はリードに異常が無ければ安静度は比較的低くなります。

ICD作動試験

リードがほぼ落ち着いて退院が近いころになると、ICDの作動の確実性を確認するため手術時に行われたように頻脈(心室細動や場合により心室頻拍)を誘発しICDが頻脈を検出し治療を行い、頻脈を停止できる事をテストすることがあります。このテストでは抗頻拍ペーシング治療やカルディオバージョン治療の効果を確認します。テストは麻酔を使用して眠った状態で行われ、時間は10~30分です。

これらのテストが終了するとテスト結果を参考に退院後の生活に合わせてそれぞれの患者さまに最適な条件をICDにプログラムします

ICDの作動試験は、治療方針や治療経過などにより、省略またはより詳細に行われる事があります。術後の注意事項として、主治医に確認して下さい。

手術後から遠隔期の合併症について
リードによる合併症

1. リードの移動

ICD手術の後数ヶ月の間は心臓内に留置されたリードがしっかりと固定されておらず、動きやすい状態にあります。運動や日常での腕の動きを制限することがあります。制限される動きや期間などを担当医師に確認して指示に従って下さい。

2. リードの損傷・断線

体内に留置されたリードは筋肉や骨または外からの強いストレスにさらされると損傷や断線する可能性があります。損傷や断線が発生する期間は個人差が非常に大きく、数ヶ月で起こる場合や10年以上何も無い方があります。日常生活での注意事項は担当医師の指示に従って下さい。

静脈血栓症
ICD本体・リードの感染

植込み部位近辺で感染を生じる可能性があります。感染がひどい場合にはICD本体やリードを摘出しなければならない事もあります。痛みや不快感や腫れるなどの症状が見られましたら担当医師の指示に従って下さい。

不適切な作動

ICDは心臓が興奮したときの微弱な電気を感知して心臓の状態を判断します。そのため外からの強いノイズや薬剤の影響や心不全などの影響で心臓の電気が通常と大きく変化した場合、不整脈と誤って検出し、必要のない治療や治療しなければならない不整脈を検出しない可能性があります。

早期の電池消耗

徐脈治療の設定や頻脈治療(特に最大出力の電気ショック治療)の頻度が高い場合には、早期に電池が消耗する事があります。

日常の運動や電気機器類などの注意事項につきましては後述いたします。

抗不整脈薬について

頻脈性の不整脈を対象とした主な抗不整脈薬は、「Naチャネル遮断薬」、「β遮断薬」、「カルシウム拮抗薬」、「精神安定薬」などがあります。抗不整脈薬はいずれも不整脈や原因となる心臓病を治すのではなく、発作の予防や、脈拍数が速過ぎないように安定化させるために用いられます。

主な抗不整脈薬と心筋に対する作用

Naチャネル遮断薬(Ⅰ群)

おもに異所性の心筋の興奮をおさえます。抗不整脈薬の大部分がここに含まれ更にIa, Ib, Ic に分類されます。

β遮断薬(Ⅱ群)

洞結節や房室結節に作用し、心室への刺激伝導を遅らせ脈を低くします。また、心室細動を抑制する効果があります。

Kチャンネル遮断薬(Ⅲ群)

カリウムチャネル遮断薬は、他の作用も併せ持っています。また、他の抗不整脈薬が、副作用が強く出る場合や効果がみられないなどの場合に用いられる強力な抗不整脈薬です。欧米でのさまざまな大規模試験の結果、心機能の改善や頻脈の予防効果はみられましたが、死亡率の低下では期待されたような改善が得られないものもありました。しかし、アミオダロン治療とICDによる治療とを比較した大規模試験においては、いずれもICDの方が死亡率を低下させるという結果でした。

カルシウム拮抗薬(Ⅳ群)

洞結節や房室結節に作用し、心室への刺激伝導を遅らせます。興奮の異常伝導や発生が左心室である心室頻拍に有効です。

抗不整脈薬が有効であれば、不整脈の発生頻度を抑制し、心室頻拍や心室細動が起こってしまったらICDで治療するように、抗不整脈薬とICDを併用して重症不整脈に対処する事が望ましいでしょう。

抗不整脈薬のVaughan Williams分類
分類 一般名・市販(薬剤)名
Ⅰ群 Ia・Naチャンネル遮断 アジマリン、シベノール、リスモダン、アミサリンなど
Ib リドカイン、アスペノン、メキシチールなど
Ic サンリズム、プロノン、タンボコールなど
Ⅱ群 β遮断 インデラル、カルベジロール、セロケンなど
Ⅲ群 Kチャンネル遮断 アンカロン、ソタロールなど
Ⅳ群 Caチャンネル遮断 ワソラン、ヘルベッサーなど

抗不整脈薬は一般に強力な薬ですが、副作用が強く特に他の薬剤との飲み合わせによっては別の不整脈の発生や、めまい・しびれ・排尿障害さらに心不全を引き起こす可能性もあります。服用される薬剤についての詳細は主治医や薬剤師や担当の看護師などに確認していただき、かならず主治医の指示に従って下さい。

定期外来による検査

退院後、ICDが正常に作動しているか、電池の消耗具合やリードに異常がないかを調べるため、定期的に検査を行います。

定期検査は医療施設によって異なりますが、数ヶ月ごとに外来で行われます。その際、プログラマという機器を用いてICDをチェックします。検査中に痛みを伴うことはありませんが、ICD本体の作動確認中は脈を速めたり遅くしたりするため不快感があるかもしれません。

定期外来による検査
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