環境

環境マネジメント

JLLグループ環境保全方針

JLLグループはサステナビリティの推進を重要な経営課題と捉えており、地球環境の保全に関して以下の各項目への取り組みを通じて社会の一員としての責任を果たしてまいります。

1. 環境汚染のリスク低減

  • 医療機器の設計、開発、生産、販売、使用および廃棄の全体プロセスで環境負荷に配慮した製品の提供に取り組みます。
  • 全ての事業活動において、使用が禁止されている有害化学物質を使用せず、製品の含有化学物質管理に取り組みます。

2. 環境保全の推進

  • 気候変動への対応のために、再生可能エネルギーの利用、省エネルギーの推進を通じて温室効果ガス排出量の削減に取り組みます。
  • 循環型社会形成のために、限りある資源を効率的に使用し、また再利用することでゼロエミッションに向けて取り組みます。
  • 自然との共生のために、水資源や生物多様性の保全および持続可能性に配慮した責任ある調達に取り組みます。

3. 法規制、条例その他社会規範の遵守

  • 全ての事業活動において国内外の環境に関する法規制・条例並びに同意した協定等を遵守します。

4. 環境経営の推進

  • 環境への取り組みに関して積極的に情報開示を行って説明責任を果たします。

環境推進体制

サステナビリティ委員会の指揮の下、環境分科会が中心となり、環境保全の具体的な取り組みの検討や活動の推進を行っています。環境分科会は、サステナビリティ委員会に対して四半期ごとに活動の進捗状況やリスク評価・対策等について報告を行い、適宜その指示を受けています。また、気候変動のリスクに関しては、サステナビリティ委員会はリスクマネジメント委員会と情報共有を行う等、連携して対応を行っています。

環境推進体制

環境対応工場の実現

当社は、国内に戸田ファクトリー(埼玉県)、小山ファクトリー(栃木県)、市原ファクトリー(千葉県)の3工場を設けています。各工場はそれぞれに立地する地域の環境法規制を遵守し、生産活動に従事しています。これまで重大な環境事故・漏出等は発生していません。

また、3工場とも生物多様性を毀損する危険性のある立地には該当していません。

戸田ファクトリーおよび研究開発部門の所在する施設Medical Technology Parkでは、LED照明、複層ガラス、雨水利用などの省エネルギー・環境対応設備を積極的に採用しています。こうした取り組みにより、CASBEE※において、Aランク(BEE=2.1)の評価を受けました。なお、小山ファクトリーにおいても上記と同様の設備仕様を採用しています。

また、小山ファクトリーではLED照明および自然光を積極活用する設計としているほか、市原ファクトリーにおいてもLED照明化を実施済みです。

※Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency(建築環境総合性能評価システム)の略。

建築物の環境性能を評価・格付けする手法で、省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮のみならず、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステム。

Medical Technology Park(North Square)

Medical Technology Park(North Square)

TCFD提言に基づく情報開示

当社では、環境負荷の低減を重要なマテリアリティの一つとして捉えており、その中でも気候変動は事業の継続や持続的な成長に影響を及ぼす重要なリスクや機会になると認識しています。 金融安定理事会(FSB)により設置された「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提言に基づき、4つの開示項目に沿って、当社の気候変動への取り組みを開示します。

ガバナンス

気候変動に関する取り組みについては、サステナビリティ委員会の指揮の下、環境分科会が中心となり具体的な対応の検討や活動の推進を行っています。環境分科会は、サステナビリティ委員会に対して四半期ごとに活動の進捗状況やリスク評価・対策等について報告を行い、適宜その指示を受けています。また、気候変動のリスクに関して、サステナビリティ委員会はリスクマネジメント委員会と情報共有を行う等、連携して対応を行っています。

気候変動に関する取り組み

  • ・気候変動に関するシナリオ分析
  • ・短期・中期・長期の気候変動のリスクおよび機会の特定と重要度評価
  • ・特定された重要な気候変動のリスクおよび機会に対する戦略的な取り組み方針の検討
  • ・気候変動のリスクおよび機会への具体的な対応策の検討
  • ・気候変動のリスクおよび機会に関して採用された対応策の推進

サステナビリティ推進体制図

サステナビリティ推進体制図

戦略

気候変動によるリスクと機会の特定にあたり、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)、日本国政府などが発表している情報をもとに、1.5℃/2℃シナリオと4℃シナリオを設定し、当社事業への影響をシナリオ分析しております。

IPCCによる第5次報告書では、「代表濃度経路シナリオ(Representative Concentration Pathways)」に基づいて、気候の予測や影響評価を行っており、21世紀末の放射強制力の違いによってRCP1.9~RCP8.5と呼ばれる複数のシナリオで分析が実施されています。

また、これらのIPCCによる報告書をベースに国際エネルギー機関(IEA)や日本国政府でも1.5℃~4℃シナリオの複数の温度帯下でのエネルギー情勢や社会側面に対する影響シナリオを研究・公表されており、当社では、それらのシナリオを参考にシナリオ分析を実施しています。

Global average surface temperature change

(出所)IPCC 「AR5 WG1 Summary for Policymakers」

また、気候変動によるリスクおよび機会を評価するにあたって、当社では以下の評価基準を設定し、財務影響を分析して当社事業への影響を特定しています。

評価軸 概要
時間的視点 気候変動の影響が顕在化し、当社事業へ影響を及ぼすと想定される期間がどの程度か
(長期・中期・短期)
発生可能性 気候変動の影響が顕在化し、当社事業へ影響を及ぼす可能性がどの程度か
(高い・中程度・低い)
影響範囲 気候変動の影響が顕在化し、当社事業へ影響を及ぼす影響範囲がどの程度か
(大規模・中規模・小規模)

<シナリオ分析>

想定期間 :2030年度まで

採用シナリオ(1.5℃/2℃):IPCC/RCP2.6、IEA/SDS
         (4℃):IPCC/RCP8.5、IEA/STEPS

● リスク

シナリオ分析の結果、移行リスクでは、炭素税の導入などの気候変動対策を進める政策手段の導入や温室効果ガス排出削減につながる製品(製造時、使用時に炭素排出が少ない製品や医療機関の効率化に貢献する製品)市場への対応が当社の業績に大きな影響を与える可能性があると特定しました。

物理的リスクでは、異常気象による災害被災時の開発・製造機能の停止やサプライチェーンの断絶が当社の業績に大きな影響を与える可能性があると特定しました。

(当社への影響の大きさについて高・中・低をそれぞれH、M、Lで示しております。)

移行リスク

分類 リスク要因 当社への影響 対応策
1.5℃/
2℃
シナリオ
4℃
シナリオ
政策・規制 GHG排出の価格付け進行 M L ・計画的に省エネ活動を推進する
・再生可能エネルギーを活用する
・炭素税導入により、事業活動にかかるエネルギー費用が増加する(販売・マーケ、開発・製造)
技術 既存製品/サービスの低炭素オプションへの置換 L L ・環境配慮製品(製造時、使用時の炭素排出が少ない)を開発する
・医療機関の効率化(オペ時間短縮など)に貢献する製品を開発する
・低炭素関連製品の市場拡大により、開発・製造検証が発生し、費用が増加する(開発・製造)
市場 消費者行動の変化 H L ・環境配慮製品(製造時、使用時の炭素排出が少ない)を開発する
・医療機関の効率(オペ時間短縮など)に貢献する製品を開発する
・気候変動対応要請に対し、積極的な取り組み、情報開示を行う
・低炭素関連製品の市場拡大に対応できず、売上・利益が減少する(市場)
・取引先からの気候変動対応要請に答えられず、売上・利益が減少する(市場)
原材料コスト高騰 L L ・サプライチェーンの構成メンバーとの気候変動に関する協働計画を策定する
・仕入先からの原材料、仕入費用にエネルギーや運賃にかかる直接費用が付加され、費用が増加する(調達)

物理的リスク

分類 リスク要因 当社への影響 対応策
1.5℃/
2℃
シナリオ
4℃
シナリオ
急性 サイクロンや洪水などの異常気象の重大性と頻度の上昇 M H ・台風や洪水等の被災に対するBCPプランを策定する
・開発・製造機能の分散化を図る
・原材料調達の複線化や代替案検討を進める
・物流の代替手段や早期復旧プランを検討する
・開発・製造検証プロセスの効率化を推進する
・台風や洪水等の被災により開発・製造停止が発生し、売上・利益が減少する(開発・製造)
・台風や洪水等の被災により製品供給の物流機能が断絶し、売上・利益が減少する(販売・マーケ))
・開発・製造検証プロセスの効率化を推進する
慢性 降雨パターンの変化、気象パターンの極端な変動 L M
・原材料、エネルギー調達の複線化や代替案検討に関する費用が増加する(調達)
・物流の代替手段や早期復旧プランの検討により製品供給途絶リスクが減少する(販売・マーケ)
・保険料支払い費用が増加する(管理)

● 機会

シナリオ分析の結果、輸送手段/製造プロセスの効率化によるコスト低減や温室効果ガス排出削減につながる製品の開発による売上増加が、当社の業績に大きな影響を与える可能性があると特定しました。

(当社への影響の大きさについて高・中・低をそれぞれH、M、Lで示しております。)

分類 機会要因 当社への影響 対応策
1.5℃/
2℃
シナリオ
4℃
シナリオ
資源の効率 効率的な輸送手段の利用/効率的な生産・流通プロセス M L ・輸送手段の効率化を推進する
・製造プロセスの効率化を推進する
・産業廃棄物のリサイクルを推進する
・効率的な配送形態(共同配送など)により、配送費用が減少する(販売・マーケ)
・製造プロセスの集約により、製造費用が減少する(開発・製造)
再生利用(リサイクリング)の利用 L L
・簡易梱包や製品設計の簡素化により、原材料費用が減少する(開発・製造)
・産業廃棄物のリサイクルにより、廃棄費用が減少する(開発・製造)
製品・サービス 低炭素商品/サービスの開発、拡大
消費者の好みの変化
M L ・環境配慮製品(製造時、使用時の炭素排出が少ない)を開発する
・医療機関の効率化(オペ時間短縮など)に貢献する製品を開発する
・低炭素関連製品の市場拡大により売上・利益が増加する(市場)
・取引先からの気候変動対応要請に応えることで売上・利益が増加する(市場)
市場 新たな市場へのアクセス L L ・新たな疾患を治療する医療機器を開発する
・気候変動により新たに発生した疾患を治療する医療機器の開発により売上・利益が増加する(市場)
レジリエンス
(回復力)
再生可能エネルギープログラムへの参加、省エネ対策の採用
資源の代替/多様化
L M ・原材料調達の複線化や代替案検討を進める
・物流の代替手段や早期復旧プランを検討する
・原材料、エネルギー調達の複線化や代替案検討を進める(調達)
・物流の代替手段や早期復旧プランの検討により製品供給途絶リスクが減少する(販売・マーケ)

リスク管理

当社では、環境分科会が中心となり、気候変動のリスクについて組織横断的に議論しております。立案されたリスクの影響度と対応策については、サステナビリティ委員会で定期的にリスク影響度の見直しを実施するとともに対応策の進捗状況の確認を行います。

全社のリスク管理については、リスク管理規程に基づき、リスクマネジメント委員会が中心となり実施しております。気候変動のリスクは、リスクマネジメント委員会にも報告されており、議論がなされています。取締役会は気候変動のリスクに関してサステナビリティ委員会およびリスクマネジメント委員会から報告を受け、監督を行っています。

コーポレート・ガバナンス体制図

コーポレート・ガバナンス体制図

指標と目標

温室効果ガス(CO2)の排出は、炭素税等の影響により当社の経営成績および財務状況に関するリスク要因となり得ます。その一方で、温室効果ガスの排出削減につながる製品を提供することで、ビジネスチャンスにもつながります。当社全体ではCO2排出量の削減を、サステナビリティにおける最重要課題の一つとして認識し、削減に向けた具体的な取り組みについて指標を設定して進捗を管理しています。

当社では、2030年度を見据えた中長期CO2排出量削減目標を以下の通り設定し、CO2排出量削減に向けた取り組みを推進してまいります。

CO2排出量削減目標
2030年CO2排出量50%削減(2021年3月期比)
※グローバルScope1,2排出量※1を対象

2023年3月期CO2排出量(グローバルScope1,2排出量対象)

(単位:t-CO2

区分1 区分2 区分3 排出量 排出量
区分計
排出量
合計
(基準年)2021年
3月期
(参考)2022年
3月期
Scope1 国内 販売 1,425 1,453 1,454 1,488 1,436
製造 28
海外 販売 0
製造 1
Scope2 国内 販売 612 3,208 5,158 5,462 5,284
製造 2,596
海外 販売 8 1,950
製造 1,942
総合計 6,612 6,950 6,720

なお、現在Scope3排出量※2の把握を進めており、算出が完了次第開示いたします。

※1 Scope1,2排出量:自社の事業を通じて直接的・間接的に排出される温室効果ガス排出量
※2 Scope3排出量:自社のサプライチェーン全体から間接的に排出される温室効果ガス排出量

エネルギーに関する取り組み

省エネルギーへの取り組み

当社が医療機器の製造をするために用いているクリーンルームには、電力の監視装置が備えられており、常に電力の使用量を把握しています。

また、クリーンルームはその作業環境を維持するために24時間365日の稼働が原則となりますが、戸田ファクトリーおよび小山ファクトリーでは夜間・休日は半分の空調設備のみの稼働とすることで、エネルギー使用量の削減に努めています。

3工場で使用する電力は新電力へと切り替えを行っており、その選定にあたってはコストだけでなくCO2排出量がより少ないことも基準としました。

再生可能エネルギーの活用

当社では太陽光発電システムを2017年より戸田ファクトリーに、2021年より市原ファクトリーに導入しています。両ファクトリー合計の年間想定発電量は286.2MWhとなり、CO2の排出量は126.2t削減されました。他ファクトリーにおいても再生可能エネルギーの利用を促進していきます。

市原ファクトリーの太陽光発電パネル

市原ファクトリーの太陽光発電パネル

エネルギー消費量(開発生産部門合計)

2019/3期 2020/3期 2021/3期 2022/3期 2023/3期
電気使用量(MWh) 6,176 5,806 6,211 6,268 6,193
LPG使用量(Kg) 3,510 3,584 3,233 3,775 4,370

水資源の有効活用

当社製品の製造においては上水を使用する工程が多くあるため、各ファクトリーにおいて水使用量の削減に取り組んでいます。特に冷却等のために大量の上水を要する設備においてはチラー(冷却水循環装置)を設置し、一度使用した水を循環させ再利用することで水資源の保全に取り組んでいます。

水使用量(開発生産部門合計)

2019/3期 2020/3期 2021/3期 2022/3期 2023/3期
水使用量(㎥) 16,104 14,760 12,584 16,821 13,184

有害物質の管理

環境や人体に悪影響を与える化学物質が製品に含有されることがないよう、各国の法規制を踏まえて管理を行っています。

また、小山及び市原の両ファクトリーでは、製品滅菌にEOG(エチレンオキサイドガス)を使用しています。EOG滅菌は低温でも滅菌効果が高く医療機器では広く使われていますが、EOGは強い毒性を有するため燃焼処理し、無害化してから排気することで環境負荷の低減を図っています。

廃棄物に関する取り組み

産業廃棄物のリサイクル

廃棄物のリデュース(抑制)やリユース(再利用)に取り組むとともに、循環型社会の実現に貢献するためにリサイクル(再生利用)にも注力しています。製品の製造工程で生じる廃棄物や滅菌有効期限を超過して使用できなくなった製品等、リサイクルの対象となる廃棄物の範囲を拡大しリサイクル率の向上に努めていきます。

産業廃棄物のリサイクル率

2021/3期 2022/3期 2023/3期
リサイクル率 90% 92% 96%

医療機器の廃棄に関する管理

当社で取り扱う製品および商品の大部分には滅菌期限が定められており、再滅菌ができる一部の製品および商品を除き、その期限を越えたものは廃棄せざるを得ないため、期限切れを起こさないように在庫管理を行うことが重要となります。

廃棄にあたっては産業廃棄物業者に依頼し、そこで必要に応じて分別を行っています。また、廃棄の手続きについては、マニフェストで管理を行っています。

段ボール使用量の削減

羽田・大阪の物流拠点では段ボール箱が大量に発生するため、可能な範囲で再利用し、汚損・破損したら廃棄するという形をとっています。

小山ファクトリーと羽田の物流拠点間では納品にリユース可能な搬送用カートを導入しており、段ボール箱の使用量削減につなげています。

製品に含まれるレアメタル部材の回収

当社が扱うカテーテルの先端には、プラチナ部材が使用されています。製造時に仕損じたものについて、プラチナ部材のみを回収し、1年分をまとめて貴金属業者に売却し、レアメタルをリサイクルするという取り組みを行っています。また、協力会社で製作している先端電極(プラチナ含有)は、製造工程で切削くずが発生するため、これを回収してリサイクルするよう依頼しています。

物流および営業車両における取り組み

当社の取り扱う製品および商品は医療機器であるため、適切な温度管理や風雨にさらされない保管が必要となります。このため、在庫管理および配送は、環境の整った外部の物流センターに委託しています。

また、当社で使用する営業車両の多くはリース車両であり、ハイブリッド車を選択可能としています。全リース車両におけるハイブリッド車の割合は95%となっています。

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